さてその、地球が丸い場合の離れた距離にある山の見かけの高さの計算方法だが、これがさぱ〜り ┐(^^)┌わからない。検索しても、ピタゴラス先生のお知恵を拝借すれば小学生でも解けるような「地平線はどこまで見えますか?」的な緩い問題の計算はいくらでも出てくるが、こちらの計算方法は情弱の私には見つけられなかった。
これは自力で解くしかない。

からd離れた0にある高さbの山の見かけの高さは、での接線とまでの直線との角度αになる。
Earth1
dは曲面上の距離だが、地球の半径Rを持ってきて角度θを使えばなんとかなるだろう。

うーむ。。。。。。

なめこさんは当初、すっかり忘却の彼方にあった余弦定理をネット上でたまたま見つけて、あっちこっちの角度を入れ込めばいいや、とお気楽にアプローチしていつものように(笑)どツボにはまった。単純かと思っていた式が、代入したり展開したりしているうちに、油断しているとまたたくまにsin、cosの嵐になるのである。
そういえば思い出したが、なめこさんがかつてまだ学業に勤しんでいた頃、板書で問題を解いていた人がsec xを繰り返し書いているうちに混乱が生じたのか、cの部分がいつの間にとんでもないこと♪になってしまっていた場面を目撃したことがある。それほど三角関数の計算は恐ろしいのだっ!(意味がわからない)
sin、cosの嵐に収拾をつけようとして、加法定理だか何だか定理だかを持ち込むとさらに事態が悪化する。sinとcosの量が倍増するのである!なんと恐ろしい。。。(笑)
もう何十年も真面目に計算とかしたことがないから、式を整理するノウハウがまったくわからないのである。

余弦定理なんぞを使って、ダイレクトに角度を求めようとするからいけないのだ。基本に立ち返り、tanαを計算することを考えよう。

2,3補助線を引いてみる。
Earth2
からB’までの距離をB’からまでの距離(見かけの高さ)をkとすれば、k / lが求めるべきtanαとなる。

R地球の半径hbの標高とすれば、
  l = (R + hb)sinθ
そして
  m = (R + hb)cosθ
なのでからの地平線上に見える部分の高さk
  k = m - R = (R + hb)cosθ - R
ということになる。

これ以上式をいじるとまたどツボにはまるので、まずはここで一旦、前記事のデータの表から大山富士山lkを計算しておこう。

   距離d 標高hb
大山 23195 1252
富士山 69129 3727.9

お気づきかと思うが、この段階での標高を考慮していない。それは後で対応する。

その前に必要となるのが地球の半径Rだが、ここは国土地理院の掲げている数値を使用する。
  R = 6378137
地球が楕円体だとかそういうめんどくさいことはここでは考えない。

各距離dに関して
  θ = d / R
を計算すると、

   距離d θ 標高hb
大山 23195 0.003637 1252
富士山 69129 0.010838 3727.9

有効桁数の概念とかはM教授(誰だよ?)にみっちり仕込まれたはずだが、その辺も適当である。(M教授に謝れ!)

次にR + hbはいずれの計算にも使用するのでこれも求めておく。

   距離d θ 標高hb R+hb
大山 23195 0.003637 1252 6379389.0
富士山 69129 0.010838 3727.9 6381864.9

いよいよlkの計算である。
  l = (R + hb)sinθ
  k = (R + hb)cosθ - R
θが小さければ、sinθcosθの近似ができそうだが、その説明と有効性の検証が面倒なのでバカ正直に計算することにする。

   距離d θ 標高hb R+hb l k
大山 23195 0.003637 1252 6379389.0 23202 1209.8
富士山 69129 0.010838 3727.9 6381864.9 69165 3353.1

kはそれぞれから見た地平線上の高さということになるが、それらは実際の高さよりも、大山:42.2m、富士山:374.8m低い。これは地球が丸いことにより、地平線の下に沈み込んでいる高さということになる。数十kmレベルの距離でも地球の丸さを無視してはいけないのである。

地平線下の沈み込みを確認するため、ここまではの標高を0としてきたが、あらためて瀬谷Aの標高67.7を計算に組み入れよう。難しいことではない。B'の地平線を上に平行移動させるだけである。(注:平行移動後のB'は厳密には地平線ではない場合があるが、山頂までの角度の計算上は問題ないはずである)
Earth3
標高haから見たB'からの高さをk'とすれば、
  k' = k - ha
それぞれについて計算すると、

   距離d θ 標高hb R+hb l k k'
瀬谷A - - ha)67.7   - - 0.0
大山 23195 0.003637 1252 6379389.0 23202 1209.8 1142.1
富士山 69129 0.010838 3727.9 6381864.9 69165 3353.1 3285.4

いよいよ
  tanα = k' / l 
を求めてみよう。

まずは大山
  tanα = 1142.1 / 23202 = 0.04922

次に富士山
  tanα = 3285.4 / 69165 = 0.04750

勝った!(何がだよ)

   距離d θ 標高hb R+hb l k k' tanα
瀬谷A - - ha)67.7   - - 0.0 -
大山 23195 0.003637 1252 6379389.0 23202 1209.8 1142.1 0.04922
富士山 69129 0.010838 3727.9 6381864.9 69165 3353.1 3285.4 0.04750

富士山の方が大山よりもtanα が小さい。角度で換算すると、今度は大山の3%ほど富士山が低いということになる。
これは富士山頂と大山山頂が重なって見える場合、手前の大山富士山が隠される可能性があるということである。

だが実際はどうだろう。瀬谷Aの位置の場合、前記事の図で示したとおり、両山頂は完全には重なっていない。多少向こう側にいる富士山が低かろうが、単に天候の関係で見えなかっただけの可能性もあるのだ。
まだまだなめ蔵さんの無念は晴らせない。(だから本当に死んだのか?)

富士山の最高点、剣ヶ峯の計算をごまかしていたが、念のためここで計算しておこう。
  剣ヶ峯までの距離:69809m
  剣ヶ峯の標高:ご存知!3776m
  θ = 69809/6378137 = 0.010945
  R + hb = 6378137 + 3776  = 6381913
  l = 6381913 x sin(0.010945) = 69849
  k = 6381913 x cos(0.010945) - 6378173 = 3393.7
  k' = 3393.7 - 67.7 = 3326.0
  tanα = 3326.0 / 69849 = 0.04762

まあこちらも似たような値で、大山よりも小さい。もしも大山とぴったり重なっていた場合、剣ヶ峯の先っちょだけ飛び出しているという可能性はないだろうということになる。

実地篇へつづく